当日は、「エッジコンピューティングはなぜ必要か」「どのようなユースケースがあるか」「開発環境をどう整えるか」をテーマに、機密情報を扱う現場におけるAI活用のあり方や、現場で機能する実装・運用の考え方について意見が交わされました。
パネルディスカッションの様子
なぜ今、AI活用で「実装環境」が問われるのか
近年、生成AIの活用は急速に広がっています。一方で、業務で扱う情報の性質や求められる応答速度、運用環境によっては、クラウドだけでは対応しづらいケースも見えてきています。
今回のパネルディスカッションでも、機密データの取り扱い、通信遅延、データ転送コストといった観点から、AIをどこで動かすべきかが重要な論点となりました。
こうした背景を踏まえ、高橋は、AICEがオンプレミスおよびエッジ環境での活用を重視する理由について、セキュリティを挙げたうえで、クラウドかエッジかを一律に判断するのではなく、業務要件に応じて適切な構成を見極める必要があると述べました。
「一番大きい理由は、やはりセキュリティです。機密情報を扱う現場では、データがどこまで移動するのかを含めて設計し、自社環境の中で扱える構成にすることが重要だと考えています」
実装の現場で問われる、インフラ整備と立ち上げ速度
エッジAIの社会実装において、多くの企業が直面する課題のひとつが、インフラ整備にかかる負荷です。高橋は、導入の成否を左右する要素として、立ち上げ速度の重要性を指摘しました。
「エッジAI導入で大きなハードルになるのは、インフラ整備に時間がかかることです。だからこそ、できるだけ早く立ち上げて、すぐにアプリケーション開発に入れる環境が求められていると感じています」
また、限られたリソースの中でも、実業務に耐えうる応答速度や運用性をどのように確保するのかということも、現場実装における重要なテーマとして議論されました。
当日は、エッジAIの活用例として、以下のようなユースケースも紹介しました。
- 建設・製造業: カメラ映像をエッジで解析し、危険エリアへの侵入をリアルタイムに検知・通知
- 医療機関: 外部ネットワークから遮断された院内サーバーにローカルLLMを配置し、診療ガイドラインや院内規定を安全に自然言語検索
- 公共・消防: 消防署内にローカルサーバーを設置し、量子化したAIモデルを用いて、遅延を抑えたリアルタイムな業務活用を実現
ローカル環境でも避けて通れないセキュリティ設計
エッジAIの実装が進む中で、単にローカル環境にAIを配置するだけでは、十分とは言えません。高橋は、システム全体を見据えたセキュリティ設計の重要性について、次のように述べました。
「ローカルLLMは安全だと思われがちですが、外部のWeb検索などとつなげた瞬間に、想定しない挙動が起きるリスクはあります。単にローカルに置くだけでなく、周辺を含めたセキュリティ設計まで考えることが必要です」
今回の登壇では、クラウド活用とオンプレミス・エッジ活用を対立的に捉えるのではなく、扱うデータの性質や運用環境、セキュリティ要件に応じて、現場で機能する構成を見極めることの重要性が共有されました。
AICEは今後も、AIを安全かつ実用的に活用できる環境づくりを通じて、企業の現場への定着と事業変革につながる取り組みを進めてまいります。
パネルディスカッションの様子
イベント概要
・イベント名:Edge Innovation Day
・日時:2026年3月13日(金) 11:00 〜 18:00
・会場:シスコシステムズ合同会社 東京本社
(東京都港区赤坂9-7-1 ミッドタウン・タワー21階)
・主催:シスコシステムズ合同会社
登壇者プロフィール
高橋 将生(AICE株式会社 代表取締役COO)
東京大学大学院情報理工学研究科でOSのセキュリティ研究に従事。米国IT企業にて、金融業界・製薬業界・自動車業界における画像処理・自然言語処理を活用した機械学習PJのAIテックリードなどを経て、AICEを共同創業し代表取締役COOを務める。
※ 本記事は発表当時の情報です。AICEは2026年5月に本社を東京都新宿区西新宿(新宿住友ビル)へ移転しました。